クッキー作りと格闘・・・
さて、初めてのバレンタインプレゼントをあげた結果がハッピーエンドとならなかっただけでなく、言葉を交わすこともなくなってしまったので、バレンタインが嫌になってしまったのかというとそうでもありませんでした。
時間が経ったからということもあると思いますが、二度目にチャレンジしたのは三年後の高校一年の時でした。
その頃は、高校から自宅が遠いということもあって下宿していました。なので、お菓子作りをする人がいないその家には道具がほとんどありませんでした。
あるのは量りとオーブントースターと小さなボウルぐらいで、家で作るよりもさらに工夫が必要でした。
私の入っている部活動に所属する生徒の多くは男子で、この頃には、三年前のバレンタインデーよりも義理チョコが定着していてみんなの期待も大きかったので、全員にあげないわけにはいきませんでした。
ところがバレンタインデーの二日前に母方の祖父がなくなってしまいました。バレンタインデーの日がちょうど告別式なので、前日の13日学校が終わってすぐに祖父のうちに出かけると連絡が入りました。
必然的に13日と14日は買いに行っている時間は無いから、二日前のその連絡をもらった瞬間、祖父に食べてもらうことはできないけど、手作りのチョコをあげてさよならしたいと思ったので、部活の先輩と同級生の分と合わせて作ってあげることにしたのです。
その数は全部で10個もあり、バレンタインデーのチョコ作りは大変な作業となりました。
まず、道具が足りないので型抜きのクッキーはできません。それで、生地を伸ばして折りたたみ冷蔵庫にねかせる、また伸ばして折りたたんで冷蔵庫にねかせるというのを2,3回繰り返し、冷蔵庫から取り出して8mmの幅に切って、切り口を上にしてから焼くとハート型に広がる『パルミエ』というクッキーにしました。
小麦粉と卵とバターと砂糖を量って、手順どおりうまく作れると思ったのですが、まだまだ経験不足なのと、このタイプのクッキーは初めてだったので時間がかかり大変でした。
最初の難関は、ボウルが小さかったことです。
10人分のパルミエを作るには、少なく見積もっても一人5枚にして50枚は必要でした。
綺麗にできたものが50枚必要となると、失敗するかもしれない分も合わせた量の生地は結構な分量でした。
ただでさえ小さいボウルだから一度に全部入れて作ることは不可能でした。
なるべく早く作りたいと思うとボウルの限界ぎりぎりまで入れるので混ぜづらく、そんなこととは経験していない私にわからなかったので、余計に時間がかかりました。
それを2回繰り返してなんとか生地をつくり焼いてみると、トースターの調子をつかめないのと、ねかせた生地の具合が良くなかったようで、ハートにうまく広がらないものや、やけ具合がイマイチなものができてしまい、綺麗にできた分だけでは足りなくて、追加でまた生地を作ることになりました。
しかも、残りのバターが一回分ぐらいしかなく、もう失敗はできないと焦りました。これが二番目の難関でした。